医療法人社団 誠馨会 千葉メディカルセンター

不整脈

脈が速い、遅い、乱れるなどの、リズムの異常を呈する状態を「不整脈」と呼び、一般的な症状としては、動悸、息切れ、ふらつき、になりますが、様々な愁訴を呈します。脈が極端に遅くなると、心臓から送り出される血液が不足し、全身主に脳に行く血液量が不足し、ふらつきやひどい場合には意識を失うことがあります。逆に、脈が早すぎた場合にも、心臓が空うちの状態となることで、十分な血液を送り出すことができなくなり、心不全などを合併することがあります。治療の必要がないものから、急ぎ治療を要するものまで幅広く、まずは状況を見極めるのが不整脈治療の第一歩です。

また、たとえ症状が軽度であったとしても、心房細動という代表的な不整脈では、脈の不整が初期症状で、脳梗塞の原因となりうることもあります。セルフチェックはもちろんのこと、異常を感じた場合には、早めの受診が重要です。最近では、家庭で簡易に心電図を測定できる、携帯心電計やスマートフォンを利用したアプリ、デジタル腕時計といった心拍数を測定できるもので簡単に脈をとることもできます。ぜひお気軽にご相談に受診してください。

また、不整脈による徐脈は失神(突然の意識消失・転倒)の原因にもなります。失神するけど原因がわからない、病院でいろいろな検査をしたけれども原因がわからなかったという場合には、埋込型心電図計(implantable cardiac monitor ; ICM)が良い診断ツールとなり得ます。薄いメモリステックのような外見で、内部に電池とメモリ、表面両端に記録電極が内蔵されています。局所麻酔で、皮下に1cmほどの小切開を加えて挿入し、10分程度で植込みは終了します。サイズが小さいので植込んだ後もほとんど目立ちません。電池寿命は2〜3年で、その間、不整脈が起これば、ICM は自動的に心電図を記録します。記録は遠隔モニタリングシステムにより、病院と通信させることが出来ます。埋込型心電図計は、原因不明の脳梗塞が起こった時にも、心房細動などの不整脈を見つける目的でも用いられます。

カテーテルアブレーション治療

不整脈に対しては長い間、薬物療法とペースメーカー植え込み術のみが主たる治療法でありました。特に、脈が速くなる不整脈に対しては、抗不整脈薬と呼ばれる飲み薬での治療が広く一般的でありました。一方で、抗不整脈薬は副作用が問題になることも多く、当院では、患者さんのニーズに応じて、カテーテルによる不整脈治療を提供しております。

カテーテルアブレーション(経皮的心筋焼灼術)という治療で、不整脈の原因となる心筋の一部分に火傷の痕をつけることで、余分な心筋の電気信号を途絶するというものです。

昨今とくにこの治療の対象として多いのが「心房細動」という不整脈です。心房細動では、脈がバラバラに打つために脈が急に速くなったり、遅くなったりします。結果として、動悸感や倦怠感、めまい、などの症状を呈したりします。しかし、無症状の場合もあり、たまたま心電図をとって見つかることも少なくはありません。たとえ症状がなくても、心房細動は、心臓の中に血の塊(血栓)が出来、脳の血管に飛ぶ(塞栓)を起こすことで、脳梗塞の原因となるため、高齢者や持病がある方は非常に重要な疾患です。脳梗塞以外にも、心不全増悪、認知機能障害、生活の質(QOL)の低下といった多くの問題につながることが知られております。人生100年時代となり、罹患患者さんが非常に増加しており、社会的問題にもなっています。早期発見と治療が重要です。

従来、心房細動を含め不整脈といえば薬を飲んで治すということが当たり前でしたが、不整脈に対する薬は副作用があることや、だんだん効かなくなってくることが知られています。

根本的に心房細動に治療アプローチするのがカテーテルアブレーションです。長所と短所がありますが、うまく使い分けることで心房細動を3泊4日程度の入院で根本的に治すことが可能になってきています。当院では治療中の苦痛をできるだけ軽減できるように、深麻酔でカテーテルアブレーションを行っております。一般に、治療時間は2~3時間程度で、眠っている間に治療することができます。

当院では、心房細動を根治するアブレーションとして、「高周波カテーテル」と「クライオバルーン」の2種類の治療を行っております。

高周波カテーテルを用いたアブレーションでは肺静脈起始部を1点ずつ焼灼し、線とすることで、肺静脈を電気的に隔離します。一方、クライオアブレーションでは、バルーン状カテーテルを肺静脈の入口部に当て、亜酸化窒素ガスで-60度、それぞれ約180秒間冷却し凍結させることで、肺静脈起始部を1回の冷却で全周隔離することができます。これにより、治療時間が短縮することが知られています。また、高周波カテーテルのようにカテーテルを細かく移動させる必要性がなく、やわらかいクライオバルーンを肺静脈流入部周囲に接して行うため、心臓の壁を突き破ってしまう心タンポナーデや左房食道瘻といった重篤な合併症の懸念が少ないと考えられています。それでいてかつ、有効性は、高周波アブレーションと同等と報告されており、有用な治療オプションです (1-3)。しかし、全ての症例に、クライオバルーンによる治療が適用できるわけではありません。まず、心房細動のみが治療適応ですので、他の不整脈を合併している方には使用できません。心房細動のみであっても、肺静脈隔離術しか適応できないため、心房粗動併発や上大静脈隔離など、肺静脈以外に対する治療介入が必要と考える場合は、高周波カテーテルを選択します。また、形が球状なので、解剖学的に肺静脈の形が合わない場合も、選択できません(共通幹や拡大肺静脈など)。

クライオバルーンに関しては、最近の臨床研究(ランダム化比較試験)で、クライオバルーンによるアブレーションは、薬剤抵抗性の有無を問わずに、第一選択治療として、発作予防や症状改善に優れることが示されてきました (4-7)。また本邦導入当初、持続時間1週間以内である発作性心房細動に対してのみ、適応が限定されてクライオバルーンですが、近年の臨床研究で良いデータが報告されたため、持続性心房細動(1週間以上に心房細動が持続)の患者さんも治療可能となっています (8,9)。
クライオアブレーションは、日本心電学会認定不整脈専門医研修施設であることや緊急心臓血管手術が対応可能であることなどの、基準をクリアした施設認定を受けた病院のみで施行できます。

心房細動でお困りの患者様は、ご相談だけでも結構ですので、ぜひ循環器内科外来に受診ください。また心房細動の患者様を診て頂いている近隣の先生方も、どうか遠慮なくご紹介を頂ければと存じます。

カテーテルアブレーションは、心房細動以外にも、心房粗動、心房頻拍、発作性上室性頻拍、WPW症候群、期外収縮、心室頻拍、などといった様々な不整脈に対しても適応があります。治療に関して、ご不安や説明をお求めの方は、ぜひ気軽に外来を受診してください。

1)Akkaya E, et al. J Cardiovasc Electrophysiol. 2018 Mar;29(3):375-384.
2)Kanda, et al. Pacing Clin Electrophysiol . 2020 May 18. doi: 10.1111/pace.139
3)Kuck, K et al. New Engl J Med . 2016; 374(23): 2235-2245
4)N Engl J Med 2021;384:316-324
5)N Engl J Med 2021; 384 : 305 – 15.
6)EP Europace 2021;23:1033-1041.
現在、症候性発作性心房細動に対する第一選択治療としてガイドラインにも推奨されております。
7)[2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版不整脈治療]
8)Journal of cardiovascular electrophysiology 2020;31:2553
9)Heart Rhythm. 2020 Nov;17(11):1841-1847.

ペースメーカー治療

脈が遅くなることを徐脈と呼びます。極端に脈が遅くなると、心臓から送り出される血液が不足し全身に行く血液量が不足し、脳血流低下による眩暈や失神(意識を失う)や、心不全を起こしてしまいます。脈の数を正常に戻すために用いられるのがペースメーカー植え込みで、電気刺激によって脈拍を調節し症状を改善させます。以前は、ペースメーカーの大きな欠点が「MRIを撮れない」でしたが、現在は条件付きで、MRI撮像可能なデバイスが主流となっております。本体も小型化され寿命も長いものが使えるようになりました。 また、当院では「遠隔モニタリング」というものを導入し、自宅にいながらにして、ペースメーカーのチェックが可能となり、異常が早期発見できるシステムにも対応しております。

また皮下にペースメーカーの機械本体を植え込む必要がない、新しいデバイスである「リードレスペースメーカー」の植込みも行っております。いくつかの制限があることから、現段階では一部の患者さんに限定的な適応とさせていただいておりますが、この場合には、メスなどによる切開は必要なく手術による体への負担は少なく、手術後も外からはペースメーカーが入っていることは全くわからない出来上がりになり生活の質向上へつながります。

植込み型除細動器、心臓再同期療法

心不全の治療もできる新しいデバイス

一瞬で命を奪う致死的不整脈に対してAED(体外式徐細動器)が知られ、広く普及しております。このような致死的不整脈を持病として持っておられる患者さんに対して、究極的な治療となるのがICDと呼ばれる「植え込み型除細動器」です。さらに、心不全自体を治療するペースメーカーとして植え込まれるデバイスが、CRT(心臓再同期療法)という機械です

植え込み型除細動器(ICD)

これは、AEDを小型化してペースメーカーと同じように体内に植込むようにしたもので、24時間365日で患者さんの心臓電気的活動を常に監視し、命を危険にさらす心室頻拍や心室細動を感知すると不整脈が停止するようすぐに電気ショックやペーシング刺激よる治療を行い心臓の脈拍を正常に戻してくれるものです。抗不整脈薬による薬物療法と併用することで、より安全に、より有効に使用できます。

心臓再同期療法(CRT)

心臓再同期療法(CRT)に使用する両心室ペースメーカーは、微弱な電気刺激を心臓の左右両方の心室に送り、心臓の壁の動きのズレ(左脚ブロックと診断された方など)を主な原因とした心臓のポンプ機能低下に対して、ズレを補正することで心臓の収縮力を改善し、心不全を治療します。CRTには、先の植込み型除細動機能(ICD)を併せ持つ器機(CRT-D)もあり、心不全の治療を行いつつ、突然起こりうる致死的不整脈による突然死も予防できる、特別なペースメーカーです。

当院では、これらの高度な機能を有したペースメーカー関連デバイスの植え込みにも対応しておりますので、疑問などありましたら、是非、外来担当医にご相談ください。

循環器内科