スポーツ傷害とは

膝の傷害

前十字靭帯損傷

前十字靭帯は大腿骨と脛骨(すねの骨)をつないでいる靭帯で脛骨の前方偏位(前への移動)と内旋(内側へのひねり)を制御する役割をしています。

どのようなスポーツで
起こりうる傷害か
サッカー、バスケットボール、バレーボール、スキー、柔道、ラグビー、野球などに多く発症し、急な方向転換や停止動作、ジャンプの着地や踏み切りで受傷しやすいです。
受傷肢位は膝軽度屈曲での外反位 (つま先が外向きで膝が内へ入る状態)が多いとされています。女性に多い傾向にあり その頻度は男性の2~3倍といわれています。
どのような痛みが生じるか 受傷時に膝くずれ(ガクッとなる、ずれる感じ)が起こり、時にポップ音(断裂音)を伴います。関節内に血液がたまることもあります。膝の痛みと腫脹は通常1週間から10日で改善しますが、膝不安定性の残存が問題となります。
どのような治療をするか 前十字靭帯損傷 保存治療と手術治療に分けられます。
保存治療はリハビリテーションで主に筋力トレーニングや動作訓練、装具療法を行います。
しかし、前十字靭帯は周囲からの血流(栄養)が乏しく治癒しにくいことが分かっており、保存治療には限界があります。膝くずれ症状を放置することで2次損傷(半月板、軟骨損傷)を引き起こす危険があるため、症状が改善しない場合は手術を検討します。
手術治療は自分の膝屈筋腱を用いて靭帯を再建する方法で、当院では解剖学的2重束再建を行っています。
完治までのおおよその期間 最短で10~14日程度の入院が必要で手術翌日から松葉杖歩行、膝関節曲げ伸ばし訓練を開始します。術後約4週松葉杖歩行、3ヶ月からジョギングより開始し6~8ヶ月よりスポーツ復帰としておりますが、実際に受傷前の競技レベルまでには9~10ヶ月以上要することが多くなっております。

半月板損傷

半月板は大腿骨と脛骨の間にあるアルファベットのC型をした軟骨で内側と外側の対になって存在し荷重時クッション作用と膝関節の安定を担っています。

どのようなスポーツで
起こりうる傷害か
過度の衝撃やひねりで損傷しスポーツ全般でみられ、前十字靭帯損傷と同時に受傷する場合も多いです。
先天的に半月板の大きい円板状半月の場合や中年以降の変性を伴った半月板では、軽微な外傷で発症することがあります。
どのような痛みが生じるか 関節裂隙(関節の隙間)の痛み、腫脹、引っかかり感などの症状がみられる。特に階段昇降時や膝を深く曲げる姿勢(あぐらや正座)で痛みが出ることが多い。断裂した半月板がはさまって膝の曲げ伸ばしができなくなるロッキング症状を呈す場合もあります。
どのような治療をするか 半月板損傷保存治療は、リハビリテーションやヒアルロン酸関節内注射を行うことで自然回復を促します。
半月板は辺縁の一部を除いて血流がなく修復しにくいため、症状の改善がない場合は手術を検討します。手術治療には半月板切除と半月板縫合があり、どちらも関節鏡を用いて行います。断裂した半月板部分のみ切除し、縫合可能な部分には縫合術を行います。現在はなるべく半月板を温存するよう心掛けております。
完治までのおおよその期間 半月板切除のほうが半月板縫合よりも後療法が早く、手術翌日より荷重歩行を許可し、1ヶ月からランニングを開始、2~3ヶ月でスポーツ復帰を目標とします。
縫合術は、切除より荷重を2週間遅らせる必要があり、スポーツ復帰までは4~5ヶ月となります。

離断性骨軟骨炎

離断性骨軟骨炎とは 関節軟骨の一部が壊死して骨と一緒にはがれる疾患です。
膝関節に最も多くみられ、大腿骨内側に85%、外側に15%、まれに膝蓋骨にみられます。

どのようなスポーツで
起こりうる傷害か
発症原因は不明な点も多く、はっきりしていませんが、ランニングやジャンプを繰り返し行うスポーツ選手に多くみられます。10代に多く、男女比は2:1と男性に多い傾向にあります。円板状半月を合併することも多いです。
どのような痛みが生じるか 初期はスポーツ中、もしくはスポーツ後の違和感や鈍痛のみで症状がはっきりしませんが、軟骨片がはがれてくると引っかかりやズレを訴えるようになり、時にロッキング(軟骨がはさまる)を起こします。
どのような治療をするか 離断性骨軟骨炎 成長期では保存加療が選択され、運動制限による経過観察を行います。レントゲンやMRIで修復が認められれば、スポーツを徐々に再開します。
成長期以降の治療遷延例では、針で骨に穴を数ヶ所あけて出血させることで軟骨再生を促すドリリングという方法を行います。また、軟骨片がはがれ遊離した場合には軟骨片を固定する方法や軟骨片の固定が困難な場合には自家骨軟骨柱を移植する方法(モザイク)が行われます。
完治までのおおよその期間 どの治療法もおおむね3ヶ月から6ヶ月でスポーツ復帰しておりますが、病期や経過によってはそれ以上長期化する場合もあります。